【安易に借りるな】安易に医学生向け奨学金を借りた或る医師の末路

Savings Piggy Bank Money Coin  - Tumisu / Pixabay お金のことあれこれ
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この記事では安易に地方自治体の医学生向け奨学金を借りてしまった結果、元本1200万円+違約金400万円の計1600万円を返済する羽目になったとある医師の話をしようと思います。

ぬー
ぬー
何を隠そう私のことです

事の経緯

時をさかのぼる事十数年前。某大学医学部に合格して浮かれている私の元に、入学手続きの大量の書類に紛れてペラ紙1枚のこんな案内が届きました。要約すると、

●●県の医師確保修学資金を借りませんか?
・入学金、授業料、生活費コミコミで年間200万円貸与します!
・県外の方でも申し込めます!
・卒後9年間、県内で勤務してくれれば返済は免除します!
・しかも無利子です!ただしこの修学資金に関連する条例をお読みください。
といった内容。どうやら「地域枠向けに用意した奨学金の枠が余ったので、一般試験で入った人にも貸します」ということらしい。県外出身の私でしたが、無利子という甘い言葉に惑わされ「まぁ9年ぐらい余裕っしょ、最悪返せばいいやw無利子だしw」と安易に申し込んでしまいました。そして通ってしまった申請。
さぁ、ここで案内に書いてある一番最後の行にご注目ください。
ただしこの修学資金に関連する条例をお読みください。
ただしこの修学資金に関連する条例をお読みください。
ただしこの修学資金に関連する条例をお読みください。

当時の私の考えがトルコの激甘スイーツバクラヴァより甘いことは承知の上で声を大にして主張したいのは、A4のペラ紙1枚以外に規則の詳細などは一切添付されていなかったということです。

(思い返せば、大学側が敢えて細かい規則を書いた紙を同封しなかったのかもしれません)

数年後に検索してみると、県のホームページの隅っこにちっちゃい字で該当する条例へのリンクが貼られていました。わかるかこんなもん

ルールをよく確認しないで貸与を受けた私が一番悪いのですが、違約金の発生について一言も触れられないまま契約が済んでしまったのでありました。

そして奨学金を借り始めて1年ほど経過してから、9年間の義務を果たせなかった場合は元本1200万円全額+およそ400万円の違約金を一括で支払わなければならないという事実を知りました。さらに一括返還できなかった場合は年利14%の利子が発生します。サラ金も真っ青の金利です。

ちなみにこの9年間のうち3、4年目と7、8年目には地方の病院へ行かなければならないということです。このルールは入学後に条例が改正されて追加されました。

あの時、他からお金を借りてでも返還していれば傷はそこまで大きくなっていなかったと思いますが、私はそこでも間違えました。

ぬー
ぬー
ま…まぁ、9年間働くし…大丈夫だろ…

と思って、奨学金を借り続けてしまったのです。

しかし、6年間の大学生活のなかで様々な人と出会い、様々な体験をしていく中で人の考えというものは変わっていきます

・留学行きたいなぁ
・色んな土地に住んでみたいなぁ
・あの病院で後期研修したいなぁ
・っていうか9年間も自分の住む場所制限されるのつらくね?
・女の9年ってデカくね?いわゆる結婚適齢期じゃね?
・半端な時期に2回地方に飛ばされて、そんな中で家庭作れるの?無理じゃね?

などなどいろんな思いがあふれてくるわけです。

大学を卒業し、元本だけで1200万円まで膨らんだ奨学金を抱えて働き始めた私の中で、その思いがさらに膨れ上がります。

卒後3年間は、奨学金の規則に則り地方で勤務を続けました。本来ならば4年目も地方で勤務しなければならなかったのですが、「どうしてもここで働きたい」という都市部にある病院に出会ったことで、合計1600万円もの奨学金を返済することを決断しました。

お金を貯める知識も乏しかった私には、この途方もない額を一括返済するのは無理でした

県庁の担当部署に出向いて、

・貸与を受ける時点での違約金の説明は不十分だったと思う
・従事した3年間分については減額してもらえないか
・全額を分割で返済させてもらえないか

などなど数回にわたり交渉しましたが、担当者は「条例に書いてあるんだから特例作るのは何が何でも無理、説明が不十分だったという証拠もない」の一点張りです。

ぬー
ぬー
法律相談では、弁護士さんに「条例だし県を相手取って訴訟起こさないとムリだし勝てるかもわかんね」って言われて終わりました

悩みに悩んだ挙句、何とか貯めた手元の700万円と合わせて某銀行で年利4%で900万円のフリーローンを組み、借り換える形で1600万円を一括返済しました。毎月ぎりぎりの額まで繰り上げ返済を行い、約1年8か月で完済。生活をやりくりしながら返済を続けるのは本当につらかったです。

ぬー
ぬー
幸か不幸か、その過程でお金に対する考え方が改まったのでありました…
ぬー
ぬー
言うこと聞いた3年間分だけでも返還してもらえないか、今でも時々考えることあります

 

まとめ

前期試験で合格後、余った地域枠向けの奨学金枠で安易に奨学金を借りてしまった医師の話をお送りしました。

  1. 「無利子」「返済不要」という言葉につられて、安易に義務年限付きの奨学金を借りるのはやめよう。奨学金(借金)は、自分の未来の時間をお金と引き換えにすることに等しい。そしてタダより怖いものはない
  2. 考え方は時間とともに変化していく。借りる段階で「義務年限は果たせる」と思っても、6年間の在学期間で自分の方向性が定まっていくにつれて「やっぱり無理」となることは往々にしてある。
  3. 違約金の額によっては、学生支援機構などで有利子奨学金を借りるほうが100万倍マシな可能性あり。条例を今一度よくよく確認するべし。

もともと地域枠で入学して地域医療に従事する義務のある人には良い適応の奨学金だったかもしれません。

もちろん実家に金銭的余裕がない中で奨学金を貸してもらったことは感謝していますが、今となっては他にいくらでもよい方法があったなぁと思います。

前後期試験をパスして何の束縛もない入学権を得た人が、わざわざ縛りのある奨学金を借りるのはオススメしません。ほんとに

同じ思いをする人が少しでも減ればよいなと思います。

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